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2009年3月13日 (金)

イノベーション・オフセット

※今日の内容はCSR日記にも掲載しています。

昨日はアカデミーヒルズ六本木BIZの環境シリーズ「環境とビジネスは両立するのか」というセミナーに参加してきました。すでにファーストインプレッションは書いたのですが、内容のまとめも兼ねて少し振り返ってみます。

講演で大きなポイントになったのが、「適正に設計された環境規制は、企業の国際競争力を強化させる」というマイケル・ポーターの仮説です。さまざま な著作が翻訳されているポーターですが、この仮説についてはこれまで翻訳されたことがなかったそうで、会場で講演シャン尾三橋氏が監修して翻訳されたとい う書籍が配布されました。これはまた別の機会に紹介したいと思います。

このポーターの仮説は静学(statics)ではなく、動学(dynamics)を前提にしています。あまり解説がなかったのですが、ようするにあ る一定の条件に固定された世界で考える従来の静学では環境対策はコストでしかないが、時間の概念を導入した動学では環境目標と産業の競争力は両立するとい うことのようです。

ポイントになるのが「イノベーション・オフセット」と呼ばれる考え方で、初期投資費用をイノベーションによって相殺するというもの。

比較的わかりやすい例だと思ったのが、ガソリン車の環境規制を厳しく行った日本版マスキー法で、その規制をイノベーションで乗り越えた日本車が、初期投資はかかっていても、最終的に規制対応を怠ったアメリカ車に対して優位を持つことができた、というもの。

このイノベーション・オフセット自体は、別に環境の専売特許というわけではなく、ようは初期投資が大きくなって一時的には不利になっても、そこでイノベーションを起こすことによって、最終的に勝利を収めることができる、ということになるでしょうか。

そのイノベーションを起こさせる誘因として環境規制を「適正に」するべきだ、というのがポーターの仮説のようです。

このイノベーション・オフセットを起こすために求められるポイントが次の3点。

  1. 適正に設計された環境規制は、他国よりも、先んじて法制化されれば、他国の競合企業よりも間違いなく利益をもたらす。
  2. 手ぬるい環境規制よりも厳格な環境規制の方がイノベーションを誘発する。
  3. 厳格な環境規制は、資源生産性の向上を促し、省エネ、省資源による利益を生み出す。

この3点のうち、最初の2点は「環境」というキーワードがなくても通用する考え方なので、特に環境とビジネスにおいて考えなければいけないのは3点目ということになるでしょうか。

これは意外と大切な視点だと思います。大切なのはその規制に対応することが「環境にやさしく」なるのではなく「資源生産性の向上を促す」ことにつな がるかということ。「環境にやさしい」だけでは、時として資源生産性の向上には結びつかないことがあるのではないか・・・ということは疑ってかかる必要が あるのかもしれません。

ちなみに「よい環境規制」というのはこういうものだそうです。

  1. 人々の健康(安心・安全)を守るための規制
  2. 環境破壊、劣化を防ぐための規制
  3. 早晩、実施が見込まれる規制
  4. イノベーションを誘発させる規制

今企業をとりまく環境規制のうち、1と2については強く意識されていますが、3と4についてはどれだけ意識されているでしょうか。法規制に限らず、社会が(生活者が)企業に求める環境対応というのも、実はこうしたことを意識していく必要があるのかもしれません。

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