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2009年5月27日 (水)

納品業者への圧力

台湾アップル社に対して、納品企業に対して適切な指導をせよという申し入れが行われたそうです。

台湾アップル社への抗議行動(レイバーネット)
http://www.labornetjp.org/news/2009/1243012123334staff01

内容としては、

アップル社は、著名な世界的ブランドであるにもかかわらず、納品業者であるWINTEKが、台湾および中国で大規模なリストラ、賃下げなどを行っていることに対して何ら対策を採ろうとしていない。抗議を行った団体は、アップル社が「納品業者行動規範」にのっとり、WINTEK社に待遇改善を行い、搾取をやめ、労働者代表と話し合いの席に着くことを指導するよう要求した。

というもの。サプライヤーの労働環境に対して、適切な指導を行えという要求で、いわゆるCSR調達を求める内容と言ってもよいでしょう。

ただ、少し気になる点がいくつか。

一つ目は「著名な世界的ブランドにもかかわらず」という部分。そうしたブランドでなければ良いのでしょうか。取引契約がどうなっているかは分かりませんが、たとえばこの納品業者はアップルとだけ取引をしているのでしょうか。そうではない場合、「たまたまアップルという世界的な企業だから騒いでいる」と受け取られかねません。

もっとも、グリーンピースの抗議行動などにも見られるように、話題性も含めて社会的なインパクトの大きい相手を選ぶというのは、政治的なアピール手法としては理にかなっています。誰も聞いたことのない企業に対して要請しても、マスメディアが取り上げてくれることもなく、そもそも納品業者に対する圧力自体が発生しないでしょう。

二つ目は、これまた手法としては理にかなっていますが、問題のある企業への直接的な抗議ではなく、そこに対して圧力をかけられる企業を選んでいる点。なぜ、直接的な抗議をしないのでしょうか。部品業者のために不買などの直接的な行動を起こせないということはあるかもしれませんが、あるいはすでに抗議をしたけれども反応がなかったと言うことかもしれません。

もっとも、そうした社会的な圧力をそれほど受けない相手ではなく、世界的なブランドを持ち、そのブランドを守るために様々な対応をせざるを得ない相手を土俵に引きずり出すというのは、相手の弱いところをつくという意味では理にかなっています。

三つ目は、これが一番気になるのですが、こうした抗議行動は、サプライヤーに対してこれまでとは違ったルートで圧力を与えるものだということです。企業にとってはサプライヤーも重要なステークホルダーであり、不当な圧力をかけないように配慮する必要のある相手です。

この抗議行動は、そのサプライヤーに対して、従来の(価格や納期、品質といった)圧力に加えて、さらなる圧力をかけろ、と言っているに等しいことになります。特に今回の場合、特定の業者が名指しにされているというのが微妙な気がします。

アップル社に対して「納品業者行動規範」の遵守を求めるまでは問題ないでしょう。その規範が守られていない、という指摘もあって良いと思います。ただ、それがさらに個別の企業への取引にまで踏み込むというのが、本当に良い結果に結びつくのかという点については、少し気になるのです。他の取引業者はどうなんだろうか、と考えてしまうからです。

もちろんこうした問題は放置して良いものではなく、抗議する側にとってはやむを得ない手段なのかもしれませんが、こうした形の抗議は、アップル社にとっては、自社の課題ではなく「もらい事故」的な受け止められ方をされてしまう可能性があるのです。その場合、対応としてまず考えられるのはしっぽ切りでしょう。サプライヤー全体への対応改善ではなく、個別の企業が問題であると考えるなら、切り捨てれば良いと思うのは決して不自然ではありません。

一方これをそのまま受け入れてしまえば、今後同種の圧力が追随してくる可能性もあります。そう考えるとアップルはこの業者に限ってではなく、ある程度普遍的な対応をしなければ後から困ることになるわけで、そのあたりの対応も気になるところです。

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