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2011年10月12日 (水)

忘れないということ

昨日はGINZA☆30DAYSの復興支援トークライブ「震災後の日本人」に出席してきた。
ややオフレコ的な部分があったので、内容について触れるのはやめておくが、話を聞きながらなるほどというか、少し考えてしまった事がある。

一つは「価値観の違い」について。

価値観の違いは最大の離婚理由なのだそうだが、厳密に言えば違いが問題なのではなく、「自分は正しく相手は間違い」としてその違いを受け入れない事が原因なのだそうだ。

考えてみれば価値観が違うのは当たり前で、そこが同じでなければならないという「同じ考え方」が、違いを対立にまで昇華させてしまうのかもしれない。そういう意味では、奇妙な話だが「価値観が違うからダメだ」という価値観については、共通しているからこそぶつかるのだ。

言葉遊びの様だが、「価値観が違う」という時、そこには無意識にネガティブなニュアンスが含まれていて、「価値観が同じである方が素晴らしい」みたいな雰囲気があることはないだろうか。違う事が問題なのではなく、違う事を認めない事が問題なのだ、というのは、特に「違うな」と感じた時には大切な意識なのかもしれない。

もう一つは「被災地を忘れない」事について。

震災直後から言われていた事だが、やがては忘れるから「忘れないで欲しい」という事はよく言われている。実際、震災から半年以上が経過して、確かに報道なども減ってきているが、そこでふと思ってしまったのだ。

「忘れない」とはどういう状態だろうか。

常に意識の端にある状態、という事だろうか。だが、冷静に考えればその状態はかなり異常だ。例えばタスクリストを作る理由の一つに「一旦他を忘れる事で、集中できる状態を生み出す」という事が言われる。何かを「忘れないで心に留める」というのは、そうした状態を作れない事を意味している。

忘れない事は大切だろう。しかしそれはある種の興奮状態、パニック状態に心を置いておくという事でもあるかもしれない。

「忘れない」とはどういう状態だろうか。

自分にはガンで亡くなった母と、事故で亡くなった弟がいる。二人の事を忘れる事はないが、普段から意識して記憶にとどめている訳でもない。細部の記憶は薄れても、それを「忘れた」とは思っていない。

いやいや、それらはすでに過ぎて終わった事だ。被災地の状況は現在進行形で、決して終わった事ではない。同列に考えるのはおかしい、という考えもあるだろう。
現在進行形であるなら、過去の事と比較して「忘れる」「忘れない」を論じるのは意味がない。

「忘れないで欲しい」というのは、「関係を断ち切らないで欲しい」と同意という事になるだろうか。しかし、これまであった関係を断ち切らないで欲しい、というのは分かる話だが(そしておそらく実際に断ち切れないと思うのだが)、震災をきっかけに生まれた関係をいつまでも維持しているのは、一方で震災前の日常には戻っていないという事でもある。

もちろん、今はまだ切れて良い訳ではないし、忘れて良い訳でもない。
しかし、どこかで「忘れる」時が来るのではないだろうか。一斉に変わる訳ではないが、徐々にそうした関係になっていく事が、逆に日常を取り戻す事ではないか、などと思ってしまったのだった。


余談だが、「忘れない」よりも「思い出す」という呼びかけの方が良い気がしなくもない。思い出すという行為は、忘れるという前提に立っているので、ややさみしさもあるが、時々(むろん今の段階ではやや頻繁に)思い出そう、という方が、普通に被災地の事を記憶の中に保ち、ゆるやかに関係を維持する方法ではないか、と思うのだ。

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» 東北は今年も寒いけど、みなさんのおかげで、いつもより暖かいです。時々思い出してね [ウェブライター流転記(改訂版)]
「被災地のこと、どうか忘れないでください」 助け合いの精神はあるけど、 四六時中、被災地のことばかり考えるわけないしね。 だからといって、薄情にも忘れたわけじゃないよ。 「忘れないでください」って、どうなのよ? ちょっとヘンなお願いですよね? 部分的には、早く忘れるべき項目もあるでしょう? たとえば、肉親を亡くしたら、忘れないけど、 そればっかりでは、先に進めないでしょ。 忘れることもまた、必要なんですよね? 忘れるスキルも必要でしょ? 忘れないということ 余談だが、「忘れない」よりも 「思い出す」... [続きを読む]

受信: 2011年10月27日 (木) 17時07分

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