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2013年4月16日 (火)

人材獲得戦略としての終身雇用

終身雇用というのは、企業にとってはあくまでも人材獲得戦略のオプションの一つであって、労働者保護が目的ではないんだよな・・・とふと思ったりした。

甘やかして、世界で勝てるのか:日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130411/246495/?leaf_bn

元々日本企業の「終身雇用」の仕組みは、どちらが先だったのだろう。企業側の人材獲得手段か、社会側の労働者保護か。まぁどちらが先だったとしても、企業にとってその目的が労働者保護である事はない。これは悪い意味ではなく、経営者という「人」には雇用を守るという理念はあっても、企業という「システム(あるいは組織)」にはそうしたものはないという話だ。

これは行政やNPOも同様で、そのミッションそのものが「雇用を創出し守る」でない限り、組織にとって雇用はミッションを達成するための手段でしかない。ミッションを達成するための人材獲得手段が雇用なのであって、雇用するという事が目的化する事はないはずだ。

で、そうした「人材獲得手法」として終身雇用の仕組みを眺めると、そもそもこれが人材獲得の手段として優位性を持つには、社会全体が「そうではない」必要がある。他がそうではないからこそ、終身雇用という仕組みは人を惹きつける魅力を持ちうる。そう考えると、この仕組みが創出された頃というのは、当たり前だが社会全体はそうではなかったという事だ。
(念のために断っておくと、特にデータ等にあたったわけではない。あくまでも思考実験としての思索の結果だ。)

ところが、この終身雇用のシステムが人材獲得において優位性を発揮するには、社会全体がそうなっていく必要がある。矛盾するようだが、労働市場の流動性が高いままでは、この仕組みは足枷にもなりやすい。企業が終身雇用を約束しても、労働者が終身勤務を誓う訳ではないからだ。優秀な人材が流動しやすい社会環境では、終身雇用が優位性を保つのは難しい。

であれば、解雇規制のような形で、「他の企業も無理やり」同じシステムにしてしまえば良い。そうすれば、労働市場の流動性が低下し、終身雇用の魅力が高まる。

うーむ、だがこれでは「人材獲得手段としての優位性」は低下してしまう。企業としては自分の首をしめるようなものだ。ただ、終身雇用というシステムの持つコストや獲得の際の間口を考えると、体力があり、知名度の高い大企業が有利なのは確かだろう。そこで勝負をするという戦略を選んだという事かもしれない。

さて、先のインタビュー記事に戻ると、ファーストリテイリングは、そうした終身雇用とは別の人材獲得戦略をとっているという事になる。終身雇用が一般的な社会であれば、そうではない戦略で優位性を持とうとするのは、不思議ではない。難しいのは、社会の側が企業の終身雇用を前提とした労働者保護システムを採用しているため、ミスマッチの際の労働者のダメージが大きい事だ。

その矛盾を何とかするために、社会に対してアプローチをするのであれば、労働市場の流動性を高めていくしかない。その時には終身雇用と同様「採用システムとしてのユニークさ」という初期段階の優位性を捨てて、別の戦略オプションを採る必要があるだろう。

人材の流動性が低いというのは、流出リスクも低いという事だ。そうした「流出防止コスト」が低い中で、優秀な人材の獲得だけに資源を振り向けているのが、ファーストリテイリングの位置づけだろう。一方終身雇用の仕組みを持つ企業は、言い方はなんだが「優秀ではない人材(正確にはミスマッチの人材)」を抱えるリスクとコストを、現状では一方的に引き受けてしまっている事になる。

その段階ではどちらが優位かは明白なのだが、一方でそれは今の社会システムがそうだからであって、人材流動性が高まれば、ファーストリテイリングも相応の「流出防止コスト」を引き受ける事になり、今ほどの優位性は保てなくなる。

早晩そっちの方向に流れていくという事なのかもしれない。

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