2015年10月 8日 (木)

インナーブランディングの対象は誰か

インナーブランディングは何のために、誰に対して行うのか。
昨日は社外のブランド関係の方々と飲んだのだが、ふとそんな事を考えた(というか、口走った)。

ブランドに対するロイヤルティを高め、モチベーションをアップする・・・というのは、実はインナーに限った話ではなく、そもそもブランディングそのものである。それが目的であるなら、「やりやすい」従業員だけを対象にするのではなく、それこそ株主や投資家に対しても仕掛けるものでなければならない。

昨日の話の中では、短期的な投資対効果を求める投資家の存在がブランドの育成を妨げるような議論もあったのだが、ブランド育成の視点というのは、そうした投資家をも取り込んでこそ成り立つ。特に経営に結びつけて考えるなら、対立軸で捉えるのではなく、共創軸で捉えなければ、いつまでもトレードオフにしかならない事になってしまう。CSRもそうだが、ブランドを価値創造に結びつけていく上で重要なのは、何かと対立し消耗しあう形ではない関係の構築のはずだ。

閑話休題。関係者のモチベーションと結びつけて考えるのであれば、それを「インナー」に留める線引はおかしいのではないか・・・そんな気がしなくもない。もちろん、ファーストステップとしてそこから始めるというのは分かる理屈だが、その場合、インナーではない領域への拡大も視野に入れた形でなければ、単なる内輪の満足感で終わってしまう。

そしてファーストステップであるなら、目的はモチベーションではなく、その他のステークホルダーに対して影響力を発揮していく為の地ならしという位置づけでなければならない。ブランドをもっとも体現するのが、もっとも近い距離にいる従業員なのは間違いない。その従業員を通したその他のステークホルダーとのコミュニケーションにおいて、ブランドとしての統一感を演出していくための手段がインナーブランディングだとするなら、それは納得できる。

ただ、ではその場合においても、インナーという線引が「従業員」という捉え方で良いのかという疑問は残る。

あるいは「ブランドにとっての」インナーとアウターというのは、その忠誠心によって計られる距離感の問題で、組織の内外や、特定のステークホルダーという形では捉えられないものかもしれない。従業員の中にも「アウター」は存在し、投資家の中にも「インナー」が存在するのが、ブランドが生み出す関係性なのではないだろうか。

そのように考えれば、インナーブランディングはすでに存在する忠誠心をより高めるアプローチであり、アウターブランディングは、今はまだ存在しない忠誠心を植え付けるアプローチだと区別ができる。その対象が誰であるかに関係なくだ。

意外とその辺りの捉え方が良いのかもしれない。

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2015年8月27日 (木)

可視性とブランド

少し前のメモにこんなものが残っていた。

ブランド化とは「可視性を下げつつ」「理解してもらう」事である。

やや言葉不足なので補うと、ブランド化とはそのモノやサービスの価値の可視性を上げずに、価値の理解を促進し、価値を高めること、みたいな感じになるだろうか。余計分かりにくいな。

可視性というのは、そのモノの価値が分かりやすく見える事を示していて、そうやって買い手の理解が進む事で価値を決定づける要因、差別化の要因が少なくなり、やがて価格だけで評価されるコモディティ化が進むのだそうだ。

例えばそのモノの良さがAという何かに起因している場合に、その模倣が起こればその要因による差別的優位性がなくなる。その価値を生み出している要因が分かりやすければ分かりやすいほど、そうした事は起こりやすいため、伝える側としては分かりやすく伝えたいのだけれども、分かりやすすぎても良くないというジレンマに陥る事になる。

ブランドによるイメージ形成には、その可視性を下げる要素がおそらくある。何が良いのかよく分からないけど良い、と認知されれば、その模倣は極めて難しく、差別的優位性の維持に大きく貢献するだろう。

一方で行き過ぎれば単なるイメージで糊塗したまがい物、みたいなやり方になる。偽物というのはそういう事で、価値を示す可視性が低いからこそ、表面だけを模倣したモノが出やすいというのは、別の側面の真理だろう。身も蓋もないが。

BtoBの世界にブランドが通じないというのは、その世界では可視性が低いままでの取引などあり得ないからだ。ただ、そう考えると、BtoBの世界でブランディングなど可能なのか、という気もしてくる。逆の見方をするなら、可視性の低い状態でブランドなんかで評価していて大丈夫か、というものだ。

ただ一方で、取引相手に対する一定の信頼のようなものは確かにあり、それは定量的にはなんとも推し量り難いといった要素もあるような気がするので、その辺りは結局人間同士の取引だから、みたいなところに帰結すのかもしれない。

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2015年8月25日 (火)

ブランドの浸透ターゲット

マーケティングはもちろんだが、ブランドというのもその認知や浸透を図るターゲットの設定が重要である。特にブランディングという実際の浸透活動に当てはめた時に、きちんとリーチすべき対象は誰なのかは非常に重要な問いかけだろう。

コンシューマブランドの場合、大抵は「より多くの人に知ってもらう」事が目的になりやすいので、そのあたりの意識が希薄になりやすい。だが、厳密に言うならばそうではないはずだ。マーケティングは基本的に顧客(および潜在顧客)に対するリーチが重要だが、ブランディングの場合はもう少し厳密に、階層化というか、セグメントを切り分けてリーチの仕方を変えた方が良いような気がする。

例えばメーカーのコンシューマ商品のブランドの場合、実際にその商品を買ってもらう消費者(生活者)の他に、それを店舗に並べる直接顧客(場合によってはバイヤーと売り子でも違うかもしれない)、競合他者(参入させないなどの優位性を築くため)などが、認知浸透の対象として考えられる。高級ブランドなどの場合は、実際に購入しない人も(購入者の優越感を高めるために)認知ターゲットになってくるかもしれない。企業組織の場合は、その商品を作る従業員ももちろん浸透のターゲットになる。

彼らに抱いてもらうイメージは、基本的に同じである必要があるが、接点はまるで異なるし、場合によってはメッセージの伝え方も異なってくる。もしブランディングというのを分析的な視点で捉えるなら、そうした細分化が必要になってくるのではないか。

そして、そのように考えれば、例えば広く認知されることを目的としないようなターゲット設定を持ったブランドの構築というのも可能になる。基本的にBtoBの世界でブランドを考えるのであればそういうことになるだろうし、BtoCにおいても、カテゴリーによってはその方が有効になってくる可能性もある。

また、そうしたターゲット設定は、広く一般への認知を目的とした場合の属性情報(年齢性別など)とはまったく異なってくるかも知れない。

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2015年8月11日 (火)

インナーブランディングと理念浸透

インナーブランディング(インターナルブランディング)は、特にそれがコーポレートブランドのブランディングである場合、経営理念の確立と浸透に主眼が置かれる場合が多い。インナーブランディングというのは、従業員を対象としたブランド浸透のことであり、コーポレートブランドの場合のブランドというのは、多くは企業理念に表されているものだから、その考え方自体はあながち間違いではない。

間違いではないと思うのだが、違和感がある。それなら何故「理念浸透」と言わずに「インナーブランディング」と殊更に言う必要があるのか。単なる横文字化なのか、それとも何か異なった概念があるのか。

さらにアウターブランディング(エクスターナルブランディング)と対比した場合、何かを浸透させるという目的レベルの話ではなく、手段としてのブランディングを考えると、どこかレベルが異なるような印象を受ける。インナーブランディングとアウターブランディングは、対象が異なるだけで同じなのか、それとも対象だけでなく手段や概念まで異なるのか。

インナーブランディングとアウターブランディングが同じかといえば、多分違うだろう。対象者が違うというだけでなく、インナーブランディングはその結果従業員の行動を通してアウターブランディングに結びつけるという目的がある。言ってしまえば、アウターブランディングの手段の一つだと考えても良い。ただ、それが手段という位置づけであるなら、当然そのゴールは理念の「浸透」ではなく、その結果体現された行動が、アウターブランディングとして成立することが必須になる。言ってしまえば、理念浸透もひとつの手段に過ぎない。

その辺りは企業の理念というものをどのように位置づけるかで違ってくるのかもしれない。本来企業の理念というのは、人類や社会の持つ「人としての理念」とは違う。あくまでも組織として行動する上での判断基準であり、指針である。それはつまり、ステークホルダーに対して、その組織がどのような組織であるかを印象付けるための規範と考えて良い。ここでいう「印象」というのは、もちろん見せかけのイメージではなく、本質として実体だが、当然ながら見た目のイメージも含まれる。

つまり、そうしたものとして理念が作られているのであれば、その浸透は限りなくインナーブランディングに近い。近いが、より現実的には、その浸透の結果がどのような印象につながるかまでをKPIで捉えられる必要がある。あるいは、理念自体をそうしたものに組み替えるといった事も必要かもしれない。

まぁ実際には理念までを修正するのは難しいとなれば、その理念を印象に結びつけるまでのプロセスをマネジメントすることが、インナーブランディングには求められる。それは具体的な行動規範であったり、評価制度であったり、研修制度であるかもしれない。

そのように考えると、インナーブランディングで重要なのは、理念浸透という目的ではなく、従業員の行動を規定するあらゆる取り組みに一貫性と整合性を持たせることだと言えるかもしれない。

企業理念を因数分解して、アウターブランディングに繋がる要素を抽出し、それに関わる従業員の行動を洗い出して、その行動を方向づける施策を俯瞰する。それらの施策の結果、従業員が同じ方向に向かうことが出来るかを検証し、施策間のバランスを調整する。

そうなると、単なる理念浸透とは違った要素が生まれてくるに違いない。多分インナーブランディングにはそうした緻密さが必要なのだろう。

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2015年8月 7日 (金)

ブランドの価値を高める

商品につけるラベルとしてのブランドと、もう少し幅広い意味での価値を感じさせるブランドとは、同じブランドという言葉を使っていても、実は何かが違うのかもしれない。

・・・なんて事をふと思ったりしたのだが、何が違うのかはうまく言葉に出来ない。同じような気もするし、仮に違うとしても、それが何の意味があるのかという気もする。「人権」という概念が、その概念よりも実際に侵害されている人を守ることが重要であるように、「ブランド」もその概念がどうこうというよりも、実際にどのような価値を生んでいるのかが重要であるように思うからだ。

そもそも、そういう事を考えるのは研究者の仕事だ。実務者たらんとするならば、本来、もっとプラグマティズムな発想であるべきだろう。自分の場合、実務者と言い切れる権限があるかはやや微妙ではあるが。

商品につけるブランドが、安心・安全・信頼の証であると考えたとする。提供する側は、ブランドを付けることでそれらを保証するだけでなく、その商品が実際にそれらの価値を提供する事を示していかなければならない。ブランドが商品に一方的に価値を付加するのではなく、その商品自体の価値を持ってそのブランドがどのようなものであるかを示さなければ、ブランドの価値の連想強化にはつながっていかないからだ。

例えばある商品を作って、これはこのブランドに相応しい価値を持っているから、そのブランドをつけよう、という発想でいると、商品自体はブランドの保証を受ける事はできても、ブランドの価値を強化することにはつながらない。ブランドの保証する価値の範囲内にとどまった価値しか提供していないからだ。
お客様はこのように感じるだろう。「このブランドなら当然だよね」と。

逆に、ブランドの価値を強化するためには、どういった要素を高めていく必要があるのかを考え、それを実現し伝えていくためにはこうした商品が必要だ、という発想で作られた商品は、その商品に接した人のブランドへの評価を高めていく効果が期待できる。既存の価値の範囲内であっても、その価値への評価を強化する事になる。
お客様はこのように感じるだろう。「さすがこのブランドだね」と。

商品のレベルにおいては、新商品やリニューアルにおいて、そのような連想強化を生み出せることが望ましい。少なくとも、そうした意図を持って開発し、伝えていくことが必要だろう。それらは作ってから考えることではなく、作る前に考えることだ。

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